2012年3月11日日曜日

「他人の人生を共有する」仕事;似顔絵やさん。

「腹筋が筋肉痛になるほど激しく咳が出る風邪を引き、これで私の腹筋もカッコよく割れたのでは⁈と思ったが甘かった」…人生はほろ苦い;高橋エツコです。
お腹ポッコリなのは、胃下垂のせいだけではないのよね〜、ううう(T . T)
風邪はようやく治りました。長い戦いでした。

今日はちょっとマジメな話になります。長文になりますが、よろしかったらお付き合いください。

早いもので、昨年の3.11.東日本大震災から一年が経とうとしています。

その地震の時…私は東京タワーでお客様を描いている最中でした。
秋田から来られたという素敵なご夫婦を描いていた時、あの大地震が来たのです。
かなり揺れが大きかったので…途中でしたが中断し、お客様には避難して頂く事にしました。

しばらくして、そのお客様が戻って来られて…「今日は妻の誕生日なので、似顔絵を描いてもらいたくて来たんです。続きをお願いします」とおっしゃるのです!
時折来る余震の中、慎重に筆を動かして着色。日付を入れて仕上げて、絵を渡しました。

あの日描いたお客様にとって、絵は今となっては「誕生日」とまた別の意味で「特別な日」のものになってしまっ
たのだろうなと思います。
(地震の日は、その他に2組のお客様を描きました)
あの日はきっと帰れなかっただろう…今はどうしているかな…、絵は飾ってもらえてるのかな…、
私にとっても、忘れられないお客様となりました。忘れられない日になりました。

あの日は私も帰宅難民になり、浜松町の貿易センタービルで、色々な地方から来た人々と一夜を過ごしました。
寒さをしのぐためのダンボールを拾い集めてくれた人、持っていた食べ物を分けてくれた人、夜中に暖かいスープを差し入れてくれた近所のお店の人。

スマートフォンを持っている人は情報を伝えたり、見知らぬ人同士で励ましあったり。
そんな、人間の素晴らしい部分も見ましたが…、残念ながら自己中心的な部分も見ました。

その時、東京タワーは…暗い中を歩いて帰る人達の道しるべのごとく、暖かなオレンジ色に光っていました。
(その翌日から数ヶ月の間は、節電のためにタワーのライトアップは消灯になりました)

3/11に亡くなられた方、思い出したくないような大変な目にあった方は多くいたはずですが…
同時に、その日が誕生日の方や結婚された方など…おめでたいムードでない中、複雑な思いで記念日を迎える方々も、きっといるはずですね。
私が描いたお客様の中にもいらっしゃいます。
そんな方々にとって、今日が良き日になりますように。ちっこいハートで、ひそかに祈っています。

似顔絵やさんという商売は、主に記念日やお祝い事のための依頼が多い、ステキな稼業です。
ほとんどのお客が、ハッピーな人達。

ですが、時には…病気やトラブル、大変な任務と戦っている人や、大切な家族を亡くされた人からの絵の依頼もあったりするのです。
そんな依頼の時、私は「まずはじっくり話を聞く」事を心がけています。
それで少しでも、依頼人の気持ちの整理がつく手助けになれば良いな、と。

似顔絵師や占い師、美容師さんなど、一対一で人と向き合う職業の人は、セラピスト的な部分もあると私は思っています。

ほんの一時ですが、お客様と「人生を共有する」仕事…似顔絵やさんって、いい仕事だな。と私は思いたいし、世間の皆さんにも思ってもらいたいです。

さて、話を東京タワーに戻します。
3月10日・11日の東京タワーは、震災を風化させないため、スペシャルバージョンとなります!
3/11(日)は、ランドマークライト(いつもの、オレンジ色の全体ライトアップ)は終日消灯。
光のメッセージ「KIZUNA NIPPON」が点灯され、復興への支援を呼びかけます。
(光のメッセージは、展望台の部分の1面、1方向=南東面;東京湾側;増上寺や浜松町方向側=からでないと見えないので、ご注意ください)

今日の夜間、ぱっと見は暗い東京タワーですが、ちゃんと営業しております!
大切な記念日の人も何でもない日の人も。絆を確かめに、ぜひ東京タワーへおいでください。

3 件のコメント:

  1. 秋田で似顔絵作家やってます。僕はイベントで岩手の陸前高田市から来られたお客様を描いた事があります。津波で家や家族を失って、遺体も未だ見つかっていないと聞きました。

    そんな話を聞く事しか出来なくて何もしてあげられない自分が嫌になることがありましたが、この日記を読んでそういう事も出来るんだなと感じました。

    僕はまだ駆け出しですが、似顔絵を通して高橋さんの言うように
    そういったお客様の何かしらの力になれるようになりたいです。

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    1. 福田様
      こんな長文を読んでくれた上、コメントまで!
      ありがとうございます!
      同業の方からのコメント、励みになります。

      「「つらい思いを抱えたお客様から話を聞く」事は、少しかもしれませんが、その人の気持ちの整理の手助けになっていると思います。
      こちらの気持ちを押し付けなけれ

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  2. ば。
    病気や、事故で家族や大切なものを失った人は、自分を責めてしまう事が多いようです。
    病院や治療方法が違っていたら…、あの時、こうしていたら….、等々。
    依頼人と一緒に、故人に思い出をたどって思いをはせる事で、罪悪感や後悔の気持ちがやわらいだりすると良いなあと…願いながら話を聞かせてもらいます。
    何枚もの便せんに、びっしりと故人のエピソードをつづる人や、故人の大切なものを送ってくれる人もいます。
    もちろん似顔絵が完全に気持ちを癒したりする事はないでしょう。
    長い年月が必要でしょう。
    それでも、ほんの一時、人生を共有する事で気持ちが軽くなれば良いなあと思います。
    お互いにがんばりましょう。

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